Mind

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京都洛凰のプロデューサー・馬場伸朗の独自の感性と発想、
個性豊かな4人の職人たちの卓越した技術が生み出す京都洛凰の「京唐木」。
奇想天外で、贅沢で、クリエイティブな唯一無二の家具づくりを支えるマインドとは?
京都洛凰のプロデューサー・馬場が自身のルーツや唐木家具に込める思いを語ります。

ひらめきの具現化がものづくりの原点

ひらめきの具現化が
ものづくりの原点


祖父である先々代の村田新助の後を継ぎ、父も家具・美術品商をしていました。夷川通富小路の店舗兼工房が住まい。骨董品、蒔絵物、漆器、焼き物などの美術工芸品が幼い頃から身近にありましたが、子どもですから特に興味はありませんでした。よく美術館にも連れて行ってもらいましたが、あまりよく覚えていません。ただ、当時にインプットされたものは、私の感性の土台になっていると思います。
大学卒業後は株式会社プレーベルに入社、30代前半に中国の段通という絨毯の開発に携わったことが大きな転機でした。オリジナル図案の段通を作ることになり、デザインのアイデアが必要で、世界の名所などモチーフになりそうなものを貪欲に探しました。アルハンブラ宮殿の壁面装飾、イスタンブールのモスクのモザイク画、ケルン大聖堂のステンドグラスなど、実際に見に行ったり、美術帖や図録からヒントを得たりして。
これはおもしろそうだなとひらめいたものを図案家に伝え、デザインが出来上がった時の楽しさは格別のものでした。図案家の描いたデザインから刺激を受けて、アイデアがさらに広がることも。苦労も失敗もしましたが、この経験が私のものづくりの原点だと感じています。

唐木家具、京都洛凰存続の危機、伝統の美と技を継承するために

唐木家具、
京都洛凰存続の危機、
伝統の美と技を継承するために


京都洛凰は「株式会社洛凰美術工房」という社名で父が経営をしていました。バブルが崩壊するまで、唐木家具の売れ行きは好調でしたが、住宅事情や生活様式の変化、景気の後退などもあり徐々に衰退してゆきます。2007(平成18)年に洛凰美術工房は一旦解散、職人たちには断腸の思いで工房を離れてもらいました。
その後、株式会社プレーベルの京都洛凰事業部として私が担当することになりました。当時、唐木家具の売り上げは大きく落ち込み「唐木家具? まだそんなことやってるんですか・・・」というのが世の中の反応。このままでは唐木家具という日本伝統の美術品も、工房に受け継がれてきた技も蓄積も途絶えてしまうという危機感に思い悩む日々が続きました。存続のために、シンプルな家具を作ったり、箸やブローチなどの小物を作ったりして日銭を稼ぐようなことも試みましたが、それでは職人の腕を本当に生かすことにはならない。
京都洛凰の真髄とは何か、工房で長年培われてきた唐木家具の技法や知恵を継承するためにどんな方向に舵を切ればよいのか、私自身の果たすべき使命とは何なのか、悩みに悩み抜きました。そんな折、私にとっての運命ともいえる、その後の人生を大きく変える出会いに恵まれたのです。

「こんなのは見たことがない」世界の喜多俊之氏の言葉が自信に

「こんなのは見たことがない」
世界の喜多俊之氏の言葉が自信に


これからどうすべきかを迷っていた時、プロダクトデザイナーの喜多俊之さんのワークショップに参加しました。喜多さんは、日本、イタリアを始め、国際的に制作活動をされ、数々のヒット商品を生み出された方。ワークショップの課題で、伝統的な文机にヒントを得て、現代風の書斎用のデスクを作りました。
そのデザインに喜多さんがアドバイスをくださり、出来上がった作品は喜多さんにも他の参加者からも好評をいただきました。作品をご覧になった喜多さんは「こんなのは見たことがない」と。世界でご活躍の喜多さんが、京都洛凰の精度の高さ、手仕事の緻密さや丁寧さに感嘆し、高く評価してくださったことで「自分たちはすごいものを作っているんだ」と改めて実感しました。
喜多さんの言葉が、私の感性と職人の技で勝負する大きな自信と後押しになりました。唐木家具に新しいエッセンスを加えて、従来のお座敷用ではなく、玄関やリビングなどいろんな場所でお使いいただけるモダンな要素を加えた家具というコンセプトがひらめいたのもこの頃のこと。新生京都洛凰としての進むべき方向を見つけることができました。

この世に存在しないものをカタチにするおもしろさ

KYO-KARAKI with the artworks of Kyuta Manami

この世に存在しないものを
カタチにするおもしろさ


お客様に唐木家具のいろいろな楽しみ方をイメージしていただきたいと、アート作品などをディスプレイしてみると、これがなかなかおもしろくて。唐木家具のさらなる可能性を感じるようになりました。唐木家具と現代アートは相性がよく、双方の魅力を引き出す親和性もあると思います。現代アート作品からインスパイアされ、これまでにはない感覚やアイデアが生まれることもあります。
今から4~5年前、池坊由紀さん(現・専永さん)を講師に迎えてというクリエイティブ企画に参加しました。テーマは「新緑」で、その時に思いついたのがぐにゃぐにゃしたフォルムの飾り棚。新緑が芽吹き、空に向かって伸びていくようなイメージ。
伝統的な唐木家具のベテラン職人がこんなものを作ってくれるのだろうかと相談してみたところ「もちろんできますよ、おもしろそうですね」と快く引き受けてくれました。職人たちは日々、私の突飛なアイデアを具現化しようと、長年培ってきた技を生かし、新しい挑戦を楽しむように全力で応えてくれています。素晴らしい職人たちが、京都洛凰のものづくりを支えてくれているのです。
これからも、伝統と現代的なもの、和と洋、家具とアート、いろんなものを融合させ、この世に存在しないもの、見たことがないもの、変なものをカタチにしていきたい。京都洛凰にしかできない唐木家具の世界を創造していきたいと思っています。


馬場伸朗

株式会社プレーベル 常務取締役
京都洛凰プロデューサー

馬場伸朗

「近新京都店(現・株式会社プレーベル)」の創業者であり、先代の村田三郎が父。幼少期より美術品・骨董品・家具などに囲まれて育つ。同志社大学卒業後、株式会社プレーベルに入社。30代前半、オリジナルの中国段通の開発を手掛け、数々のデザイン図案の制作に携わったことがものづくりの原点に。
2008年より京都洛凰事業部で唐木家具を担当。時代の変化とともに、唐木家具の需要が減少していく中、工房に受け継がれてきた職人の技と知恵、京都洛凰のリソースを守り、生かすことが自らの使命であると決意。新しい発想と卓越した職人の技で創る「京唐木」の企画・デザイン・製造・販売を手掛ける。独自の感性とひらめきで、クラシカルとモダン、和と洋、家具とアート、さまざまなものを融合させ、その造形と存在で見る人の感性を刺激する京都洛凰だけの唐木家具の世界をプロデュースしている。


長澤 専二

Craftsman

長澤 専二

1963年、15歳で入社。当時は工房に機械がなく、昔ながらのすべて手作りという工程を経験した最後の世代であり、クラシカルな作品を主に担当している。その豊富なキャリアで職人たちの精神的支柱を果たす存在。彫刻を得意とし、美しく繊細な花鳥風月などの古典的なモチーフ、躍動感溢れる生き物や細かなディティールまで緻密に再現した植物など、あらゆる造形を彫りで巧みに表現。工房での仕事を終えて帰宅してからも彫刻をするほどの彫刻好きで、さらに精巧な技を追求し続けている。

原 孝道

Craftsman

原 孝道

1969年、18歳で入社。当時の工房長に見込まれ、入社直後からすべての工程を任されたという勘の良さと高い技術をもつ。工房独自の伝承の技を生かした数々の作品を手掛けてきた。唐木家具職人としての矜持を保ちつつも、奇抜な発想のデザイン、異素材との組み合わせなども興味深い挑戦として、新鮮な気持ちで楽しみながら取り組んでいる。馬場の「こういうものを作りたい」という要望に対して、職人目線でのアイデアや手法を提案するなど、新生京都洛凰の変革を支えている。

中島 富士夫

Craftsman

中島 富士夫

1970年、15歳で入社。伝統的な技を駆使した華奢で繊細な作品、丸みのあるデザインを得意とする。曲線を表現するために厚い木から削り出し、薄く細い部分に“ほぞ”を入れていくのは非常に高度な技術が必要だが、ひときわ丁寧な職人技で美しいフォルムを創り出してゆく。その緻密さ、精巧さには、馬場も他の職人たちも一目置いている。柔らかな曲線で富士山を象った飾り棚、ユニークな感性で動物をデザインした十二支シリーズなど、遊び心に溢れた作品も多数。

森島 章人

Craftsman

森島 章人

2016年、22歳で入社。京都伝統工芸大学校で指物の基礎を学んだのち唐木家具を知り、この道を進むことを決心。美術品のようなクオリティの高い作品に囲まれ、素晴らしい技術と制作工程を間近で見られるという恵まれた環境の中、先輩職人の技と知恵を学び、次世代へと継承することが自分の使命と感じている。三人の職人それぞれの得意とする代表的な技術を教わりながら、すべての工程をこなせるまでに成長。若手ならではの感性と情熱で、独創性豊かな作品づくりに奮闘中。

京都洛凰の卓越した技術とものづくりの精神の礎

朱漆の銘に込めた思い。


京都洛凰では、新しいデザインを追求する一方、伝統の技法を大切に継承しています。
なめらかな曲面や複雑な造形も曲げ加工ではなく、高度な技術と手間と材料がかかる「削り出し」を用います。
他にも、複雑で精密な加工技術を要する「昔からのほぞ組み」、10工程にもおよぶ「磨き」、8回から9回も漆を塗り重ねる「拭き漆」。

よく、木製品は樹齢と同じ年数使えると言いますが、それは制作工程で貴重な素材の良さを生かしきり、メンテナンスを怠らなければの話。
100年後、200年後も、今と変わらぬ美しさを湛えた美術品として存在し続けるためには、どれほど手間のかかる工程であっても、一つとして疎かにはできません。

京都洛凰の京唐木には、昔から必ず朱漆で職人の銘が入っています。
それは「命ある限りこの作品への責任を全うする」という職人一人一人の矜持の表れであるとともに、数百年後、その作品をメンテナンスする次世代の職人へ、作品を通して技術を伝えるという覚悟でもあるのです。

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